T様 |
京都市北区 ★2010年9月完成 |
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「蒸し暑いなあー、全然風も通らへん。」
「なんで、こんなに違うんやろ?」
「しゃーないなあー、エアコンつけよ。」
長年、家族ぐるみの親しいお付き合いを頂いた「クラさん一家」。住暮楽さんのオープンハウスのお誘いには、たびたび出掛けていました。特に夏、風通しがよく,涼しいオープンハウスから帰ると、我が家とのギャップにいつも先の会話が繰返されていました。そして会話は決まって「定年を迎えたら今の家を壊して、土地を半分売って、その地代で住暮楽さんに建ててもらいたいなあー」と続きました。
私は、平成四年に古い家付きの土地を購入しました。その家は、昭和二〇年代後半に平屋として建築された後、昭和五〇年代まで数度に渡り、二階を乗せるなどの増築を繰返しており、特に後半は下宿の仕様として作られていました。購入時に建替えも考えましたが、予算の都合上、元と同じ間取りで一部をリフォームし、古い家を残して住んでいました。
その家は、風が通らず、湿気も多く、夏場は猛烈に暑いものでした。二階に部屋のあった子供達は、幼い日より「忍耐」を学ばざるを得ませんでした。また、家の北東に庭がありましたが、自らの建屋に遮られて陽当たりが悪く、苔が繁り、花作りなどは困難でした。
庭にあったサルスベリもここ数年は花を付けていませんでした。
平成一九年一月に、家の古い部分の基礎と外壁に大きな亀裂を発見しました。クラさんに相談し、見てもらったところ、基礎のコンクリートが劣悪で砂状化(素手でポロポロ取れる程)しているため補修困難との判断でした。ローンを抱えた身で新たな建替えはとても無理でしたが、住み辛かったこともあり、定年後の計画を前倒しして土地の半分を売却、その地代を建替え費用に充てることを考えました。しかし、高田さんの調査の結果、家に接する道が、建築基準法上、4メートルに満たない非道路であることが判明。分譲は不可能であることがわかりました。
その後しばらく、諸事情で手を付けられないままでおりましたが、昨年五月より計画を再開、色々検討した結果、土地を全面売却し、他の場所への建替えを考えました。しかし、その場合も「前面非道路、再建築不可」と明示しての販売しか出来ないとのことで、売り手にとっては非常に不利な条件であり、基礎に亀裂のある家をそのまま売りに出せないことも判明しました。クラさんは、「万策尽きた」と宣言。基礎に亀裂のある家で、改修も売却も困難…闇の中に落とされたようでした。
途方に暮れましたが、「でも」と相談に行った住暮楽さんで、土地の北側半分に最小限の予算で家を建て、南側を畑にしてはどうかとの提案を受けました。いずれ府下に住む親を迎えるにも、畑があれば良いし、自分たちも野菜作りが出来る。経済的に負担は大きいですが、夢と光が見えた思いを感じ、検討の上、お願いすることにしました。
家には、当初からの希望であたった風通しがよいことと、セルロースファイバーで断熱効果が高いことのみお願いしました。設計は高田さん達にお任せし、提案を確認する中で、私たちの希望を添えるという形で進みました。
非道路に面した家の「救済措置」としての建替えであるため、建築確認に先立ち、京都市の建築審査と言う高いハードルが待っていましたが、高田さん、洋介さんを始めスタッフの方たちは、京都市との気の遠くなりそうな長期の交渉を粘り強く続けて下さいました。
また、道路が「私道」であったため、そこに面した家の方たち全員から同意書に署名・捺印してもらうことが必要でしたが、十一軒全戸より同意を頂けるなど有難いことでした。
さらに、「非道路の防火」という観点から、家は準耐火構造が必要とされました。「防火」よりも一段厳しい「準耐火」の家は、構造に関わる木材を内部・外部ともに全て燃えない建材で被う必要があり、無垢の木の家を得意とする住暮楽さんらしさが出にくい造りとなりましたが、見捨てず(笑)、随所に工夫をして乗り越えて下さいました。
工事は、解体から基礎、上棟・家作りと良きスタッフのもと順調に進み、感謝でした。
今回の家づくりの一つの山場は、室内の壁塗りでした。予算の都合もあり一、二階の全ての壁を業者さんに頼まず、自分たちで塗るという計画に、当初は戸惑い、出来るのかと心配もありました。
しかし、妻や子どもの知人が沢山応援に駆けつけてくれ、住暮楽さんの支えもあって、何とか乗越えることが出来ました。仕上がった壁を見るとプロ級の所から蕁麻疹の跡の様な模様入りのところまで様々でしたが、優しさと手作りのぬくもりをいつまでも思い起こせる素敵なものとなりました。
また、この壁塗りは九月一日から休みを含め一〇日まで掛かりましたが、例年にない猛烈な残暑の真っ最中でした。現場にはクーラーなど無く、ほぼ窓から吹き込む風が頼りの作業でしたが、暑さは感じるものの、壁塗りに集中出来ました。これは、やはり期待した住暮楽さんの断熱効果の威力だったと思います。
前の家の基礎の亀裂発見から4年近くを経て、間もなく新しい家に入居出来そうです。これまでの長い道のりに付き合い、支えて下さいました住暮楽のスタッフの方々に感謝しています。
壁塗りの応援の方や、仮住まいが坂の上にあるからと妻に電動自転車を貸してくれた友、通勤に使う地下鉄近くに住んでいるからと私に軒先を自転車置場に貸してくれた友、陣中見舞いと差し入れして下さった近所の方…住暮楽さんを始め、多くの方たちの思いやりに支えられての今であることを忘れずに心して再出発したいと思っています。
家の工事と共に、外構が仕上がって行くのを見ると思わず笑顔が浮かびます。住みやすくなった家で、親の指導のもとに庭で野菜作りを楽しむ…。あー夢が膨らみます。
古家を取り壊す間、住暮楽さんで養生してもらったサルスベリは庭に戻り、太陽の光をいっぱい浴びて、きれいな花をたくさん咲かせています。
(すみくらつうしん 2010年10月号より、転載)