K様 |
大津市 ★2010年12月完成 |
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滋賀の会社に転職したこともあり、引っ越しを考え始めたのが約1年半前。まずは定番、住宅展示場のモデルハウス巡りで新居のイメージ作りを始めました。「子供も私達もアレルギー体質だし、全館空調に惹かれる。」という妻の言葉から、全館空調ならノウハウと実績のある大手ハウスメーカー ↓ 断熱性能も重要だから、2×4が相性がいいかな ↓ モダンな感じのS友不動産と2×4大手のM井ホームで検討しようか・・・、ここはエンジニアの俺にまかせとけ!! 建築条件なしの土地が見つかったこともあって1次プラン、2次プラン、3次プランと順調に進みました。土地の契約も差し迫った今年の正月、夫の実家で両親に2社のプランを披露。大体、方針は決めていたのですが、参考のために意見を聞いてみました。
夫母「ふーん。おもしろい間取りね。どっちがいいかなー。うーん。で、Y子さん(妻の名前)はどっちがいいの?」
妻「・・・。私は、もっと自然素材の家が良い。」
夫、唖然・・・。一同しばし沈黙・・・。
夫母「K介(夫の名前)、あんたまた勝手に決めたんでしょ。Y子さんの意見も聞かんと。」
夫「いや、全館空調って・・」
夫母「なによこれ、外に窓が無い変な家。」
夫「真ん中にパティオ(中庭)があって、外に閉じて中に開くって・・・」
夫父「K、もっとY子さんの意見も聞かんと。勝手に決めたらだちゃかん。」(石川弁)
一気に四面楚歌状態。最小限の攻撃で最大限の効果を引き出す・・。まさにレッドクリフの金城武・・。計算つくされた謀略によって数か月間進めてきたプランが焼き尽くされてしまいました。妻、恐るべし・・・。
土地の契約が迫っていたため、新たな候補探しを急ぐ必要がありました。大手ハウスメーカーでは自然素材にこだわるといっても中途半端で、かつコストがかかるので、工務店を中心に自然素材の家を始めました。そうして、雑誌「京都、滋賀で建てる注文住宅」を買って、候補にあがった数社の一つが住暮楽さんでした。
最初に住暮楽さんに行ったとき、あまりの事務所の小ささに夫は愕然。即帰ろうと思いました。ここからは多くのOBさんが経験しているとおり。半ば拉致されるかのようなOB宅見学。毎回毎回長時間に及ぶ打ち合わせ。京都までは近いが、インターから事務所が遠いので移動がかなり厄介だが、そんなことお構いなし。これが住暮楽スタイル。ただし、これを可能にするのは超優秀な保育体制。山北さんを筆頭に皆さん子供の扱いのうまいことうまいこと。ある時は、高田さんに子守りを押し付けてしまいました。(高田さん曰く、一人で子供をみるのは初めてだったとのこと。すいません。)ちなみに、子供たち(当時5歳と2歳)は山北さんのことを"住暮楽さん"だと思っていました。
数社の工務店の中から、住暮楽さんを最終的に選んだのは・・・、何ででしょう?やっぱり、初回プランの提示方法はかなり効果的だったと思います。手書きの間取りで設計意図を書き込んでいく。外観のイメージやリビングの立体イメージを手書きで添える。この手法は新鮮でした。(おまけにラミネート加工をしてくれるところはかなりポイントUP!!今でも見直したりします。)
初回プランを見たときは、ある意味衝撃的でした。子供部屋が3畳なのはあたりまえ。主寝室まで4畳半。"抜け"のために2階のトイレは通常時オープン。初回プランでは、良いと思うところ7割、はーっ?と思うところ3割といったところでしょうか。後々考えると、これが住暮楽さんの策略ではないかと思えてきます。最初にガツンと住暮楽スタイルをあてて、その後、譲歩していくことで、"まっ、このくらいならいっか"と思わせてしまう。こう考えると、今回の家づくりは方々の策略に嵌っているような・・・。まっ、そこは深く考えずに。
初回プランの1階はほぼ完璧でした。ひとえに浴室を2階に持って行ったことによって、非常にオープンで余裕のある空間が1階にできていました。一方2階は盛り沢山の内容から、スペース的な余裕がなく、無理が生じていました。2回目のプランでは、2階の間取りはかなり改善されていましたが、1階の間取りがもう一つという感じでした。そこで、こちらから要求したのは初回プランの1階と2回目プランの2階を繋げて!!ということでした。階段が2ます分ずれていたのですが、最小限の間取りの修正でなんとか1階と2階を繋ぐことができましたが、NEDOの申請などで、この時に十分な時間的余裕をとることができなかったことが後々影を落とす結果となりました。
それはそれとして、住暮楽スタイルに最後まで抵抗したのが、トイレのサイズ。事あるごとに1畳分のトイレは広すぎるとの指摘に抵抗して、1階、2階ともに1畳分のトイレを死守しました。住暮楽さん、トイレを軽視しないように。トイレは重要な瞑想空間です。
一方では、ほぼ長方形の総二階、切妻屋根≒犬小屋あるいはドールハウス というところは、"外観は若干モダンに"という夫の切なる希望は聞き届けられず(聞き流され)、半ばあきらめのような境地で現在にまで至っています。
前述のように、間取りの最終決定時に、NEDOの申請との絡みで十分に時間的余裕がとれなかったことから、実際の施工を前にしていくつか大きな修正が必要となりました。1点目は2階の浴室と1階の和室が重なるため、和室の床上げ30㎝が確保できなくなったこと。二点目は初回プランの2階と2回目プランの2階を繋ぐための階段が原因で構造的な弱点ができ、1階のオープンなエリアに1本余分に柱が必要になったことです。これらのことは前もって分かっていればもう少し他の選択肢を選ぶ余地があったため非常に残念ではあります。とはいえ、上棟後に机上のアイデアが次々と形になっていくのを目の当たりにして、非常にわくわくしています。住暮楽さんは良くも悪くも小さな工務店。大手ハウスメーカーのエスカレーターに乗ったような半自動的な家づくりとは異なり、細かいところまで一緒に考え抜いた分、できあがった家にも愛着が感じられるのかもしれません。家づくりにおける成功も失敗も、これからの生活で生じる傷や汚れさえも、良き思い出として家に刻みつつ、さらに愛着を深めていければと思います。
この原稿を書いている今でも壁に貼る和紙や各窓のカーテン、家具類の選択に頭を悩ませ、日々ネットサーフィンで寝不足気味です。住暮楽さんにとっては、"細かいところまで注文する厄介な施主"かもしれませんが、完成まであと少し、住暮楽さんには今後とも良きおつきあいをお願いしたいと思います。今は一つの区切りとして、共に家づくりに携わっていただいた住暮楽の皆さん、大工の皆さんにお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました。
(すみくらつうしん 2011年1月号より、転載)