リノベーション物語
住暮楽で家を建てられたお客様自身の文章を掲載しています。家づくりのヒントになれば幸いです。
みんなで集う「おうち別荘」
私たち夫婦は元々、加茂川中学、紫野高校の同窓生で北区で育ちましたが、ここへ来る前は洛西ニュータウンに暮らし、四軒隣には私の実家がありました。
北区で建売の仕事をするようになりその頃手掛けていた西賀茂の売れ残り物件に家を建てて引っ越そうと決めた時、私の母が「自分たち(母と兄)も一緒に連れて行って欲しい、一緒に住みたい」と言うので、私たち五人家族に二人を加えて合計七人の住める家を建てました。間取りは良く工夫されて特に不自由は無かったのですが、何かしら今一つ住み心地がパッとしない・・・
ここから主人の「居心地のいい家づくり」の研究が始まりました。
建築関係の本を読み漁る日々が続き、行き着いたところが「開放的な木の家で、しかも家全体が一定の温度をキープする」でした。ベストの断熱材を探しているうちにセルロースファイバーを知り、そこに太陽の恵みをふんだんに享受できるOMも取り入れて、換気しながら暖房のできる省エネで開放的で温かい家が作れるようになったのです。
このようにお客様には住み心地の良い家を提供できるようになったのですが、自分達の家をそんな風に変えていくにはだいぶ時間がかかりました。
初めは近くの小さな古家を借りて事務所にしていたのですが、もう少し自分たちの建物が表現できる事務所にしたいと考え、自宅の前庭に4m角の木の部屋を増築し、リビングも繋げてその辺りはセルロースでしっかり断熱しました。その後、三人の子どもたちが独立して部屋が空いたのを機に、もともと物置だった十二畳のロフトを居室に改造するとともに、キッチンを二階に上げて、一階を全面的に事務所スペースにしました。新建材だった家が、壁や天井を抜いてのびやかな木の家に変身する様子をワクワクと眺めていました。もちろんそうやって触る部分には断熱工事も行いました。
ようやく事務所も一応の広さが確保でき、ここで十四年を過ごしました。しかし社員が増えて再び手狭になった頃、鴨川べりで家からほど近い建物が売りに出るのを知り素早くゲットして新事務所にしました。
これで我が家の事務所は閉じられましたが、仕事をしながらの引っ越しは大変で、ともかく新事務所の立上げに皆が力を注ぐ中、手の回らない旧事務所(私の家)の片づけにOBさんが助っ人に来て下さり、ピカピカになったことは忘れえぬ感謝と喜びでした。
そうして一応きれいになったものの、がらん洞の事務所跡地はときおり孫の遊び場になるくらいで、どうすると言うアイデアも無く二年以上放置したままでした。
一方、私たちは会社の世代交代を息子が40歳になる2018年と決めていました。夫婦ともに高齢者となり、人生の終章をどのように過ごすのか・・・。
旅に出て緑豊かな所に出会うとその度に、「おれ、老後はここに住みたい」と言う夫。信州に別荘を持った友だちを訪ねると、「おれらも別荘買おう」と自宅を出たがる夫。「しかし、ほんまにそんなこと許されるだろうか?まだ小さい子どものいる息子や娘夫婦のサポーターは要らないのか?孫たちにたまにしか会えなくなっても我慢できるのか?」と思うと、とても賛成する気持ちになれませんでした。
元来、人との交わりが好きな私、この家を、この事務所の空いた部分を別荘風に設えて「おうち別荘」としてはどうか。旅の感じはないけれど、別荘の楽しみの半分は建物の中で繰り広げられる生活ではないか。共にご飯を作り、食べて、話して、がやがやと片付ける。それならここで出来るのではないか、そんな思いがあふれて来て主人に提案しました。「おうち別荘にしましょうよ」と。(ここまで祐子、 以下 八郎筆)
「おうち別荘?なんじゃいそれは」と最初は思いましたが、何度も聞かされてるうちにコンセプトの理解が進んで、「家庭内別居では無く家庭内別荘か、案外ええかも」と思えて来て、それからはどんどんイメージが膨らんできました。
4m角の増築部分は撤去して庭を広くし、家の前に間口いっぱいの軒、玄関は青い木のドア、入ったところに横長の土間、土間の一角に薪ストーブ、廊下は間仕切り壁を撤去してリビングと合体して広々空間に、そして玄関から裏庭まで見通せるように奥の廊下を拡幅し生け花や雛人形の飾れる棚を設ける、昔キッチンのあった場所は元に戻してセカンドキッチンとする、、、等々あっという間に全体像が決まりました。
「別荘という限りは異空間でなければならぬ」と力んでいたので、リビングは柱を抜いた跡に鉄骨を入れて、壁の内側にブロックを積んでその上にブリックタイルを貼りました。これは薪ストーブの暖かさを長く保持する蓄熱壁と、ステレオを気兼ねなく大音量で聞くための防音壁と、耐震シェルターの三つの効果を期待しています。
けちけちの予算でなるべく倉庫にたまった半端材を消費しようと思っていたのに、スタッフが「それは発注しときました」と気を利かしてくれることが多く、また「お風呂はこのままで・・・」と思っていたのにショールームへ行くと「このバスタブは高品位ホーローでお掃除がかんたん」と、マジックの落書きを水で洗い落とす実演を見せられて、ついうっかりと「これにします」と言ってしまって工事費はどんどん上がってしまいましたが、使ってみると気持ちの良いお風呂で今は満足しています。
あとは小さな菜園箱を作ったり石畳を完成させたりと外回りの仕事が残っていますがボチボチとDIYでやっていくつもりです。
(すみくらつうしん2019年1月号より転載)
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