家づくりストーリー
住暮楽で家を建てられたお客様自身の文章を掲載しています。家づくりのヒントになれば幸いです。
住暮楽の倉庫跡地をすすめられて
家づくりのきっかけ
「住暮楽の倉庫地を買って、家を建てないか」という提案をクラさんから頂いたのは、2010年の春。クラさんの息子さんは私の夫であるから、私にとってのクラさんはつまり、義理の父である。
五〇坪の敷地は、倉庫兼材木の加工場としては手狭で、田んぼの真ん中だった数年前ならいざ知らず、両サイドに住宅が立ち並ぶ状況では早朝から大きな音を立てる訳にもいかず、それならモデルハウスでも…ということになったらしい。そこで白羽の矢が立てられたのが息子夫婦、つまり私たちだった。
五年前、夫婦と当時一歳の娘の三人で暮らし始めたマンションは、夫の実家(住暮楽の事務所)から徒歩30秒。保育園にも近く、共働きの私たちにとっては最高の立地だった。倉庫地は、そこから2km程離れてしまうので、いろいろ問題はあった。しかし、暴れん坊の息子の登場でマンションも手狭になっており、子どもたちが走り回る音の問題で下の住人さんから度々苦情を頂いていた。そのこともあって、クラさんの提案はとても魅力的に思えた。
「建てたいです」 こうして私たちの家づくりは始まった。
便利だけど・・・のマンション暮し
1.キッチンが狭い!
入居当時から一番の問題がこれだった。食器棚とキッチンの間がわずか60cmしかないので、常に圧迫感があり、動きづらい。子どもがキッチンへやってくるようになると、最早身動きもままならない。「お手伝い」にあこがれる娘が、横に並んで料理や後片付けを手伝おうとしてくれるのに、お互い「ちょっとどいて!」の繰り返し。息子まで乱入しようものなら料理は続行不可能。「あっちいっといて!」。親子が楽しく集えるキッチンを切望していた。
2.北の部屋が寒い!
南北に長いマンション。北側の洋間をSHIPにしたものの、冬場の冷え込みの厳しいこと。特にシングルガラスの窓は、冷気が見えそうなほどに冷たく、近寄るのもためらう程だった。当然、冬の暖房費はかなりの額に…。
3.南の部屋でも暗い!
ベランダの上に、上階の部屋のベランダが張り出す構造で、雨でも洗濯物が干せるのは良かったものの、その分部屋内はとても暗い。昼間でも、部屋の中は照明が必要だった。
4.片付かない!
これは一概に部屋だけのせいとは言わないが、LDKと寝室、子ども部屋、収納スペースが接近しすぎているため、モノが氾濫しがちになってしまう。服、おもちゃ、寝具、本、文具などを置く場所がそれぞれ近すぎることが原因のひとつだと感じていた。
家づくりのいろいろ
1.SHIP
家族で共有する書斎スペース。うちはテレビを置かない代わりに、本を読むので、大きな本棚が欠かせない。子どもが宿題をする、親が仕事をする、本を読む。これらを同じ場所で実現するというSHIP。クラさんからそのコンセプトを聞かせてもらったのは、もうずいぶん前になる。「素敵」と思いつつ長い年月が過ぎ、ようやく自分達なりのSHIPの実現できることをとても嬉しく思っている。住暮楽的には邪道かもしれないが、この家にはSHIPが二箇所ある。
① ダイニング横の勉強机
子どもがデスクで宿題をするところを、家事をしながら見てやれる。こんなゆったりとした時間の共有。「やりなさいよ」と別の部屋から声をかけるのではなく、ダイニングテーブルで勉強させるのとも異なる、家族で別々のことをしながら繋がっていられるように考えた。ちなみに、椅子座ではなく床座である。掘り込み式の床は掃除がし辛いとも思ったが、スペースの広がりを優先した。
② 地下の仕事&趣味部屋
家でも、持ち帰り仕事に集中して取組みたい親達。そして、大きくなったら集中して勉強する(予定の!)子ども達。壁の一方を全部本棚にして、真ん中に大きなデスクを置いて共有する、クラさんが提唱するSHIP本来の形であり、我々の最初からの希望だった。マンションでも頑張ってこれに近づけていたが、6畳間では子どもの入るスペースは無かった。新居ではもっと大きなSHIPをつくりたい、そんな風に考えていた結果、地下のSHIPがつくられることになった。
2.子供室
勉強机が部屋から分離独立しているので、子供室の機能は主に寝る場所ということになる。そうなると最小限の部屋にしても良かったが、雨の日を考えて室内でもある程度遊べるようにしたかった。雨の日は外で遊べない↓夜まで元気↓眠らない↓夜中まで騒ぐ↓翌朝、親ぐったり&子ども起きない、という悪循環にこれまで何度も悩まされてきた。
そこで、合わせて9畳ほどのスペースを取り、間仕切りは設けず、二段ベッドを置いて押入れを省くことでスペースを確保。部屋の真ん中にはIKEAで購入したブランコを取り付け、吹抜け部分にアスレチックネットを張った。ロフトを含めると、子どもが占有する面積は十六畳ほどになるので、これだけあればかなり体を使って遊べるようになる。今のところ、子供たちにも大好評だが、ますます体力が付いてしまいそうで、嬉しいような、恐ろしいような…。
3.計算しつくされたキッチン
「うちの奥さんは、家づくりに興味が無いのか。」今回の家づくりで、しばしば夫が口にしたボヤキである。私は家づくりに対する欲求がどうも薄いらしい。例えば、キッチンについては「マンションのより広ければどんなのでも」などと思っていた。住暮楽で家を建てる奥さま方は、もっと家づくりへの情熱を持っておられるそうで、私の態度は物足らないらしい。
確かに、仕事柄家づくりに詳しい夫に頼りすぎていた、と思い直してキッチンの調理台の設計を始めた。設計を始めると、自分の動線が気になり始める。米びつからお米をだして、洗って…炊飯ジャーはこの位置でいい?食器はどう収めていく?などと考え始めると、非常に面白いもの。頑張って計画を練り上げたところで、夫から「ごめん、調理台があるとダイニングの丸テーブルと合わないから(調理台を)無しにした。」
新しい家でキッチンに立ち、料理をするのが楽しみである(怒)
新しい試み
1.地下室と屋上緑化
夏涼しく、冬に暖かい地下室を楽しもう。住暮楽でオススメしているが、私たちの家にも必ず地下室を設けるようにと、クラさんからのお達しがあった。夫の試行錯誤の結果、地下室を前面に張り出して、その上は屋上緑化することに決まった。
このタイプの屋上緑化は住暮楽初ということで、夫いわく、「実験」だそうである。地下室といっても上部1.2m程は地上に出た半地下で、二方向に窓があり、天窓も付けたので十分な明るさとなっている。主な用途はSHIPだが、北白川のHさん宅のように、来客者に泊まって頂けるようなソファーベッドも置きたいな、プロジェクターを付けて、ホームシアターも作りたいな、と計画中。夫は自転車を置きたいそうだが…。8畳間に夢を詰め込み過ぎないよう気をつけたい。
2.2Fお風呂の窓ガラス
透明である。そもそも、我が家は全ての窓が透明である。玄関ドアと2階のトイレだけはすりガラスになっているが、どちらも夫の手配ミスだそうだ。
お風呂を外部から見られた場合、角度的にちょうど胸から脚くらいまで見えてしまう。そこで、照明を間接灯タイプにするなど色々画策してもらったが、それでもまだ、実によく見える。窓外の花台に造園の浅見さんが小さな枯山水を作り、目隠しのジャスミンを植えて下さったが、窓を覆うようになるまで半年はかかるそうである。
最近、花台に小さなロウソクが置かれているのを発見したが、ジャスミンが成長するまでは、あれを使えということだろうか…?
DIY
住暮楽で多くのご夫婦がチャレンジしているように、うちの家も自分達で壁塗りをすることになった。養生とパテ塗りを夫がやってくれていたので、私は仕上塗りからの参加だった。コツを掴むとなかなか面白かったが、腕、肩、腰に負担が大きいので大変だった。結局、今年のゴールデンウィークの殆どを壁塗りに費やすことになった。
出来栄えには満足しているが、やり切った後で夫が「安易にお客さんに薦めるのはやめるわ〜」と言っていた。ぜひ、そうするべきだと思った。
素人さんに適正な範囲はせいぜいワンフロアだろうか。ひょっとすると物足らないかも知れないけれど、それくらいなら、苦しまずにやれそうな気がする。作業自体は結構楽しいので、一部分をDIYにされるのはおススメしたい。
家具
家具については、当初新調する予定はなかったが、結局ほとんど全て新しくすることになってしまった。思うにきっかけは、SHIPの椅子だった。これまでは粗末なOAチェアを使っていたのだが、新しい家には絶対に合わない、ということでこれだけ新調することになった。
北欧の名作椅子、或いはそのレプリカなど、夫の中ではいくつもの候補が上がっていたようだが、最終的に、先日出張先で出会った奥村昭雄先生の椅子に感銘を受け、それを買いたいと言い出した。奥村先生の著書まで買って、私にも読めと薦めてくれて、確かにとても良いものであることはわかったが、一脚十万円近くするので、私の分と2脚も買うとなると、いかんせん高すぎる。
結局、夫のトランペット預金から買うことで決着が付いた。トランペット預金とは、映画「スイング・ガール」を見て影響を受けた夫がトランペットを買いたいと言い出し、臨時収入などをちょこちょこ貯めていた資金である。貯まったら貯まったでなかなか買うまで踏み切れないのも夫らしいところだが、今回はそれが幸いした。
椅子がグレードアップしすぎると、今度は机がみすぼらしく見えてくる。仕方なく、ダイニングテーブルを買い替える予算をSHIPの机新調に振り当てた。テーブルは奥村先生の物は手が出ないので、住暮楽の家具屋さん(小林建具さん)で作ってもらうことになった。
既存のダイニングテーブルは、安い張り物とはいえ、一応木製だったので、これで良いかなと思った矢先、今度は福岡へ出張に行ったクラさんが、シンケンさん(鹿児島の有名工務店)のテーブルセット、良かったで!と薦めてくれた。(この親子、出張先で色々な影響を受けてくるようだ。)しかし、予算オーバーなので、とてもじゃありませんが…とお断りした時に、祐子さんから「新築祝いやし、家族でお金出しあってプレゼントするわ!」と言って下さった。
元々、本棚は大工さんに作ってもらっていたので、ほとんど全て処分する予定だった上、思いがけず机と椅子も新調することになってしまった。もったいないという思いは強いが、これまで無計画に安物を買っていた自分たちの姿勢を反省。良いものを買って、永く使うということで、今後は家も家具も大切にしていきたいと思う。
いよいよ今週末は完成見学会。そしてその後、地獄のお引越しが待っている。
でも、憧れていた住暮楽の家での暮しが始まることに今から胸が躍る気持ちである。住暮楽の素敵な住まい手さんたちの一員として、生活を楽しんでいきたいと思う。私たちの家づくりに関わって下さった全ての人に感謝しつつ。
(すみくらつうしん 2011年6月号より、転載)