リノベーション物語
住暮楽で家を建てられたお客様自身の文章を掲載しています。家づくりのヒントになれば幸いです。
緑に囲まれ2人の生活を楽しむ家
修学院・一乗寺地区
一乗寺といえば詩仙堂が有名です。近隣には圓光寺、曼殊院、赤山禅院といった古刹が点在しているので、この街に「名所・名跡が集中するところ」というイメージを持つ人は 少なくないと思います。ちょっと通な人にとって、一乗寺は「ラーメン屋が多い街」だったり、「おしゃれなカフェと本屋がある街」だったりするかもしれません。 けれどもぼくたち夫婦にとって、この辺りはなによりも「四季が感じられる自然豊かな散歩道」です。春から秋にかけて曼殊院近くの沢ではサワガニの饗宴をのぞき見られますし、 初夏に民家のノウゼンカズラやアジサイを眺めたり、夏に音羽の清流に足を浸して涼をとったり、秋に見事に色づいた鷺ノ森の大イチョウの下でおにぎりを食べたりもできます。 ときおり野生のシカと出会うとささやかな幸せを感じる。そんな安らぎと憩いの場所が、ぼくたちにとっての修学院・一乗寺地区です。
ぼくは大学院生のときから一乗寺に住んでいます。合唱団で知り合った妻もこの土地を気に入ってくれたので、院生時代に五年過ごした貧乏長屋を出て、そのすぐそばに、 二人で眺めのいい部屋を借りました。それから六年間、週末にお決まりのコースを散歩するたびに、ぼくたちは「ずっとここに住めたらいいのに」「この辺りでいい家が買いたい」 「でもそんなお金はない」「どうしよう…」と思い悩んできました。昨年の春、いつものように二人で鷺ノ森の近くを散歩しているとき、オープンハウスの立て看板が 目に飛び込んできました。それが住暮楽さんの家でした。
住暮楽の家に出会って
じつはその家のことは、以前から知らないわけではありませんでした。というのも、それはいつもの散歩コース上にあったので、前の家の様子をだいたい知っていて、 そこがどうやら改築工事をはじめたらしいことも、山側に向けていくつも窓を作っていることも、なんとなくは意識していたからです。 ただ、元の家がそれほど立派なものではなかったので、あまり工事を気に留めることはありませんでした。 それでもせっかく通りがかったからと中を見学してみて、本当に良かったと思います。あの家が素晴らしくなることを見抜いた施主さんの目と、 その見立てに応えてはっとするような空間をつくり上げた設計士さんのセンス、そして大工さんの腕には、まったく脱帽するしかありません。 ぼくも妻も鷺ノ森の家に一目で心を奪われて、住暮楽さん以外で家を建てることを考えられなくなってしまいました。
家に興奮して「かわいい」「すごい」を連発するばかりのぼくたちに、八郎さんと祐子さんはとても丁寧にリノベーションの説明をしてくれました。 元の家を知っていただけに、自分たちになんとかできるだけの予算でこれほどの家ができるということを教わり、とても勇気づけられる思いがしました。 それからしばらくして、住暮楽さんの事務所で八郎さんの家づくり講座(聞きしに勝る長さでした!)を聴き、 リノベーション用の家さがしをはじめる決心が固まりました。八郎さんは、外見もさることながら話しぶりが異常に頼もしくて、「こんなことはできますか?」 と訊くと、即座に「ええ、できますよ。工務店なのでやろうと思えば何でもできます。ただしそのぶんお金がかかるので予算とのかねあいになりますが」 といった調子で答えてくれます。ぼくが余計な気を使うことなく家さがしに熱中できたのは、心配性の妻を八郎さんがなだめすかしてくれたおかげです。
理想の家をつくる
幸運の女神は心構えのできた精神を好む(Fortune favors the prepared mind)」というパスツールの言葉を こういう場合に使うのがふさわしいのかよくわかりませんが、とにもかくにも、ぼくたちの希望に合う家はあっさりと見つかりました。 家屋は狭く、傷みがあっていくぶん傾いていましたが、目の前に手入れされた森があって、しかもその森に家が建つことは半永久的にないだろうという、 ぼくたち夫婦にとっては夢のような場所でした。八郎さんからも「これはいい家になりますよ」とお墨付きをいただけたので、これはもう買うしかないと腹をくくり 「えーい、ままよ!」と契約しました。
書きたいことはまだまだたくさんありますが、残りの紙幅が少なくなってきました。設計の洋介さんは、ぼくたちの「森を眺めながら音楽を聴いたり、 本を読んだりしたい」という漠然とした希望に真剣に耳を傾けて、しかもそれを完璧な形で現実化してくれました。歳が近いということもあって、 洋介さんにはついつい友達感覚で過大な要望を伝えてしまったかもしれません。ぼくたちのわがままに応えるのはさぞ大変だったろうと思いますが、 いつも笑顔を絶やさずにぼくたちの理想の実現のために働いてくれて、本当に感謝しています。 完成を目前にしたいま思うのは、家づくりでいちばん大切なのは信頼できる人との出会いだということです。八郎さん、祐子さん、洋介さん、 現場監督の峠原さん(めったにいないくらい優しい方です)、大工の北條さんをはじめ、本当にいい人たちとかかわりあえて、家づくりをはじめてからの半年間、 とても幸せでした。工期の後半には、むかし貧乏長屋で隣り部屋に住んでいたO君が、たまたま大工として手伝いにくるというサプライズもありました。 そういうわけで、家の完成はうれしいと同時にさみしくもあるのですが、住暮楽さんのことですし、 きっと引っ越し後も変わらず親しい付き合いをつづけてくれるのでしょう。いろいろな縁に支えられてできた家だから、末永く、大切に使っていきたいと思います。 いま、新居での生活がとても楽しみです。
(すみくらつうしん 2015年2月号より、転載)
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