家づくりストーリー
住暮楽で家を建てられたお客様自身の文章を掲載しています。家づくりのヒントになれば幸いです。
階段の周りをクルクル回遊できる家
「これは僕の命をかけたプロジェクトだから。」
十三年前に家を建てた時、父はこう話していたそうだ。
父は「ハウルの動く城」を観て、家づくりの力をもらったと言っていた。偶然にも父とお別れした週に、そのテレビ放送があった。戦争と戦うために旅立つ前、ソフィーにとっておきの家をプレゼントしたハウルの姿が父と重なった。以前住んでいた家は築百年を超え、住み続けるのは難しかった。父は最後の力を振り絞り、家族が安心して暮らせる場所を残していったのだ。父が住めたのは、ほんのひと時だったけれど。
父が建てた家に思い入れがあり、私には家を建てる発想がなかったので、結婚後は実家近くの賃貸マンションに住んだ。しかし、授かった二人の男の子の成長とともに、住まいの課題に直面するようになった。子供たちのエネルギーは常に家からはみ出し気味で、生活動線も混在し、妻子の間では頻繁にミサイルが飛び交う。おまけに家賃も年々上昇。とうとう妻から、今後の住まいについて考えることを求められるようになった。
実家に住むのも手だが、今のまま近所に住む方が、母も含め家族全体にとっていいのではないかと悩んでいたある日、新聞を整理していると妻が気に入りそうな家の広告を見つけた。残念ながら見学会は終わっていたが、カフェがあるというので訪ねてみた。中に入った瞬間、木の温もりに包まれ、癒される妻。騒ぐ子供たち。子供たちに手を焼いていると、隣の席のご夫婦が「これ使って下さい」とおもちゃを渡して下さった。なんと住暮楽の社長(現会長)ご夫妻だった。その縁で急きょ、家づくりのお話を聞かせていただくことに。住暮楽のコンセプトに魅了される妻。やっぱり騒ぐ子供たち。子供の面倒を見つつ、話を漏れ聞く私。その時、私が一番強く感じたのは、住暮楽さんの「良い家を建てたい」という熱意、そして「自分たち本位ではなく、お客様本位で考える」という姿勢だった。だからこそ、家づくりという私にとってはデリケートでさえある問題に、向き合う気になれたのだと思う。
それにしても、さすがは断熱効果の研究を極めた住暮楽さんである。時がたっても、妻の住暮楽熱は冷めなかった。住まい教室でのお話にも感激した妻は、ついにはチラシを壁に貼りだし、うっとりと眺め始めた。「もはやこれまで…。」私も覚悟を決めた。だが、覚悟だけでは家は建たない。今回、家が建てられたのは妻のご両親からの温かいご支援があったからだ。この場を借りて改めて感謝の気持ちをお伝えしたい。
こうした支えと数々の縁に導かれ、たどり着いたプラン作りの時間は貴重なものだった。「願いは全て叶えるから」と子供たちにも話し、プラン作りに打ち込む洋介さん。その姿を見て、「建築士」はいつしか長男のあこがれの職業になった。元気な子供たちが多少暴れようとも気にせずにすむ、シンプルで安全・丈夫な家というのが私のコンセプトであったが、あれこれ話すうち、やれ滑り台だ、やれ天窓だと家族の夢は膨らみ、予算も膨らんだ。その度に私の心には激震が走り、洋介さんが全力で作って下さった「滑り台のある家プラン」など、心と財布の耐震補強が追い付かずに夢のまま終わってしまった。
洋介さんとの話に集中できたのは、打合せ中、樋口さんや北村さんが額の汗を拭いながら子供たちの面倒を見て下さったからだ。走り回る子供たちの相手で普段の倍はお疲れになったと思うが、いつも全力でかわいがって下さって、心から嬉しかった。
「いよいよ着工!」というタイミングで思わぬトラブルがあり、家づくりは一時、暗礁に乗り上げた。半年ほど苦しい時が続いたが、洋介さんの支えもあり、何とか着工まで漕ぎつけた。工事が始まると「森さんにお任せ!」でおなじみ(?)の信頼感抜群の現場監督の森さん、そして大工の野村さん親子の素晴らしい仕事で、家は着実に形に。現場に足しげく通った妻は、野村さん親子から、その日できた部分の話や長男が好きなサッカーの話を聞くのを楽しみにしていた。また、家族そろってSHIPの壁塗りをしたことや、断熱材を森さんと八郎さんの夢のコンビに入れてもらえたことはとても良い思い出である。会長に断熱材を入れてもらい、まさに「住暮楽魂」を注入してもらった気分だ。
家づくりは大変な仕事で、病の父にはさぞきつかったに違いない。四十歳にして言うのもなんだが、私も今回の経験を通じて、少々大人になった気がする。今、感じているのは、家はこれまでの家族の歴史と、これからの家族の物語との結節点に、一つの形を持って現れるということ。そして、その価値は、そこに暮らす私たちがより良い家族になっていく時に、より確かなものになるということだ。
住暮楽さんは、家づくりの良きパートナーである。これからも多くの家族を支え、その夢を叶えつつ、住暮楽ワールドを広げていっていただきたい。
―お世話になった皆様に、心からの感謝を 込めて―
(すみくらつうしん2019年12月号より転載)